「編集」とは難しいことをやさしく伝える仕事

「やさしい日本語」への言い換え例を示したガイドブック ブログ

前回に引き続き、鈴木将仁まさひとがこれまで行ってきた「編集」という仕事について紹介します。特に鈴木が気をつけているのが、「難しいことをやさしく伝える」ということ。これは雑誌の編集に限らず、人と人とのコミュニケーションではとても大切なことだと思います。

読者の半歩先を歩くつもりで編集しなさい

これは出版社時代の社長から教えていただいた言葉です。肝心なのは「一歩先」ではなく「半歩先」というところです。つまり読者が理解できないような難しいことを記事にしても、読者はついてこないということです。逆に、読者が知っていることばかりを並べていても飽きられてしまう。ですから「半歩先」ぐらいがちょうどいいということです。

ところが世の中の文章を読んでいると難しくてよくわからないものがたくさんあります。特に行政が出す文章はとても難しい。文章を仕事にしている鈴木が読んでも難しいと感じるのですから、本当に難しいのだと思います。

政府が発行している白書の例
『建設白書』より抜粋

「◎ 難しいこと→やさしく」「× やさしいこと→難しく」

「難しいこと/やさしいこと」、「難しく伝える/やさしく伝える」の組み合わせでいちばんまずいのが「やさしいことを難しく伝える」です。これは(残念ながら)政治家に多いといわれています。自分のことを立派にみせようとしてわざと難しい言葉を使ったり、難しい言葉で厳しい質問から話をそらしたりするからでしょうか。

次にまずいのが「難しいことを難しく伝える」です。これは学者に多いといわれています。ふだん難しい問題に向き合っているあまり、まわりの人との情報(知識)の格差を見失ってしまうケースです。

やさしいことをやさしく伝える」。これは普通です。良いことなので、多くの人に実践していただきたいです。

そして最後が「難しいことをやさしく伝える」です。これは簡単なことではないのですが、とても大事なことです。例えば、新型コロナで話題となった「オーバーシュート」や「クラスター」、「ロックダウン」といったカタカナ言葉や専門用語。よほど世間に馴染みのあるもの(例えば「バス」、「タクシー」など)でない限り、使わない方がいいでしょう。

また難しい漢字や言葉もダメです。最近「かんがみて」という言葉を使う人が目立ってきました(使い方を間違っている人もたくさんいます)が、これは「やさしいことを難しく伝える」悪い例です。
→参考:【誤用】「鑑みる」は「考えてみる」という意味ではない

「やさしい日本語」という考え方

「やさしい日本語」という言葉をご存じでしょうか? もともとは阪神淡路大震災のとき、日本に暮らす外国人に多くの情報が正確に伝わらなかった教訓から生まれた考え方です。外国人でもわかる「やさしい日本語」を使いましょうというプロジェクトです。ちなみに「やさしい」は「やさしい」と「やさしい」のふたつの意味を含んでいるそうです。

「やさしい日本語」への言い換え例を示したガイドブック
『すぐに使える ツーリズム やさしい日本語(対訳本)』ヒューマンアカデミー

いちばん上の画像と同じ冊子ですが、これが「やさしい日本語」への言い換え例を示したガイドブックです。例えば「事故のため、一時運行を見合わせております。」は「事故です。今、電車は動きません。」となります。

実際にこの「やさしい日本語」へ言い換えるためには、日本語教育などの専門的な知識も必要になりますし、すべての文章を「やさしい日本語」にするのは適切ではありません。ですが考え方として、こういった「やさしさ」はふだんのコミュニケーションでもとても参考になるものだと思います。

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