先日、鈴木将仁が指導員を務めている日本語教室で外国人の中学生たちに日本語の作文を書いてもらいました。その際に気付いたのが、学校で習う原稿用紙の使い方と出版業界の書式ではいくつかルールが違うということ。例えばカッコと句点の関係。少し確認してみましょう。
カギカッコ内の会話文では、最後に句点を付けない
句点とは文章の最後に付ける丸のことです。
。←これのことです
学校で習う原稿用紙の使い方などでは会話文の最後に句点を付けて、そのあとにカギカッコを閉じると思います。
「王様は、人を殺します。」(←学校)
『走れメロス』太宰 治
「王様は、人を殺します」(←出版)
ところが出版業界ではふつう、会話文の最後の句点は省略してカギカッコを閉じます。もちろん、日本語としてどちらも間違いというわけではありませんが習慣としてそうなっています。
また、カギカッコの内容が他の文の一部であり、最後がそのカギカッコで終わる場合、句点はそのあとに付けます。
あきさせない授業のコツは「ほかの先生とは違う特徴を出すこと。質問には大きな声で答え、話を面白くすること」。
『シニアのための国際協力入門』西内正彦
文末に丸カッコがくる場合、句点はそのあとに付ける
▲ 10万円券、50万円券又は100万円券になっています。(券種は1銘柄につき1種、取引単位はこの整数倍です )
『株式の基礎知識』橋本正明
◎ 10万円券、50万円券又は100万円券になっています(券種は1銘柄につき1種、取引単位はこの整数倍です )。
文の終わりに、丸カッコでその文を補足するような記述を添える場合、句点は丸カッコのあとに付けます。これは丸カッコ内の文も前の文章の一部ですよ、という考え方です。
ただし、著作や引用元のクレジットを示す場合や、注釈が複数の文にかかる場合は句点のあとに丸カッコがきます。
精神的に向上心がないものは馬鹿だといって、何だか私をさも軽薄もののようにやり込めるのです。(『こころ』夏目漱石)←引用元を示す
まず専務がタクシーの後部座席に腰を下ろす。続いて課長が助手席に座った。(タクシーでは後部座席が上座で、助手席が下座となる)←複数の文にかかる注釈
ちなみに契約書などで、
株式会社A(以下、「甲」という。)と・・・
という言い回しが出てきますが、これを出版業界的に書くと、
株式会社A(以下、「甲」という)と・・・
となるのが自然です。しかし、これはその業界の習わしなので、こういう場合は黙ってそれに従った方がいいでしょう。